新たな需要の創出に、顧客対象層ではない層の掘り起こしがあります。そのためには、常に時世を分析し、新しい価値を提供しなくてはなりません。例えば、近年の景気に伴う、若い層の消費意欲の低下は数々の業種において大きな影響を与えております。車はいらない、洋服は無難なものがいい、お酒もあまり飲まないという世代が消費者の中心になりつつある時代、これらの層の欲求を満たす必要があります。いわゆるこれらの嗜好品ついては、低価格帯の商品を投下することで一気にこれらの若い世代を取り込むことが可能です。例えば、車はやはりそれなりの価格がしますが、シェアカーという形で車保有の(厳密には保有ではありませんが)コストを下げることができますし、洋服ではファストファッションの流行、お酒は低価格帯飲料の開発によって若い世代を取り込むことに成功しています。周りを見てみれば、外食産業も今やずいぶんと安くなりましたし、保険商品も低価格帯のものが登場しています。航空券等もLCCの登場など、世の中の大部分は価格帯を下げる業者が登場し、新たな市場を創出しているのが2000年代市況の特徴になります。
そのような中で、最近注目の企業が株式会社グライド・エンタープライズ(代表:山口道元)という企業です。ルルルンというフェイスマスクのメーカーになりますが、低価格帯のフェイスマスクを提供することで新たな市場と化粧水の概念を創出できるかもしれない注目の企業になります。これまでは、化粧水もしくはパックというケアが中心だったところ、フェイスマスクという美容液を含んだマスクを装着することで同じような効果を果たします。元々、このフェイスマスク自体は山口道元氏やグライドエンタープライズが作ったものではありません。フェイスマスク自体は商品として存在していました。しかし、グライドエンタープライズ山口道元氏のインタビューによると当時、それらのフェイスマスク商品は2000~3000円する商品だったそうです。これを1枚当たり38円というとんでもない安さにして商品提供できたのが山口道元氏のグライドエンタープライズになります。
さて、ここでグライドエンタープライズ社について振り返るとしましょう。グライドエンタープライズ社では元々は化粧品の販売を行っていたようです。オリジナル製品というわけではなく小売りに近い業態だったと言います。しかし、2011年3月の東日本大震災を契機として状況が変わりました。震災を契機にそれまで手掛けていた事業のほとんどが停止になったようです。その中でも、順調に売り上げを伸ばしていたのが販売チャネルの一つであるインターネット通販になります。山口道元氏はこのインターネット販売だけが伸び続けていることに着目し、その理由について分析してみることにしました。そこで気付いたのが、東北地方からの受注の多さです。困難な状況でも、女性は美容を気にしている、生活必要品はなにも食料や着替えだけではなく、女性にとって美容は生活の一部として切っても切れないものなのだと山口道元氏は痛感しました。そこでグライドエンタープライズ社オリジナルの商品開発を行う流れとなったわけですが、品質よく低価格にこだわって作られたのがこのルルルンだと言います。
グライド・エンタープライズは元々が化粧品メーカーではなかったからこそ、何もない状況、つまり『化粧品はこうあるべきだ』という既成概念すらなかったからこそ、業界のルールを覆すような破格の商品作りができたと山口代表は振り返ります。それまでスペシャルケアだったフェイスマスクをデイリーケアに変えるという新たな価値観の創出により発売の翌年にグライドエンタープライズは売り上げを6倍まで伸ばすという成功を成し遂げています。今後は米国やフランス、香港、台湾など海外でもこの低価格帯フェイスマスクを販売していくということなので、世界規模で顔のお手入れは化粧水やパックからフェイスマスクへと変わっていくかもしれません。グライドエンタープライズのように規制製品に新たな価値をつけ市場を創出することでまだまだ動くビジネスは多いかもしれません。山口道元代表に習うべき部分は多いのではないでしょうか。